そもそも日本遺産とは?
日本遺産は全国各地に所在する文化財を地域振興のために活用しようという文化庁の事業で2015年度にスタートしました!名前だけを見ると世界遺産に近い印象ですが、世界遺産と日本遺産の間にはまったく違う特徴があります。
世界遺産や国宝とはなにが違うの?
日本遺産と言われると、世界遺産や国宝とはなにが違うの?と思われるかもしれません。まず、世界遺産や国宝は個々(点)で注目されてきました。たとえば人吉球磨で言えば、青井阿蘇神社という人吉球磨を代表する神社が国宝に指定されています。
ただ、青井阿蘇神社が国宝になっても観光客は青井阿蘇神社を参拝には来るかもしれませんが、ほかの神社や仏閣、などを訪ねようとは思わないかもしれません。これに対して、日本遺産は点在する文化財を“ストーリー”のもとに関連付け、点から面にすることで地域をブランド化するという試みになっています。
日本遺産のストーリーとは?
日本遺産のストーリーを満たす要件としては以下の3つが挙げられています。
- 歴史的経緯や地域の風習に根差し、世代を超えて受け継がれている伝承、風習などを踏まえる
- 中核には、地域の魅力として発信する明確なテーマを設定の上、建造物や遺跡・名勝地、祭りなど、地域に根差して継承・保存がなされている文化財にまつわるものを据えること
- 単に地域の歴史や文化財の価値を解説するだけのものになっていないこと
これだけを見るとよく分からないかもしれません。そこで人吉球磨の実際のストーリーを見てみましょう!
【人吉球磨の日本遺産ストーリー】
「相良700年が生んだ保守と進取の文化~日本で最も豊かな隠れ里ー人吉球磨~」
人吉球磨の領主相良氏は、急峻な九州山地に囲まれた地の利を生かして外敵の侵入を拒み、日本史上稀な「相良700年」と称される長きにわたる統治を行った。
その中で領主から民衆までが一体となったまちづくりの精神が形成され、社寺や仏像群、神楽等をともに信仰し、楽しみ、守る文化が育まれた。同時に進取の精神をもってしたたかに外来の文化を吸収し、
独自の食文化や遊戯、交通網が整えられた。
保守と進取、双方の精神から昇華された文化の証が集中して現存している地域は他になく、日本文化の縮図を今に見ることができる地域であり、司馬遼太郎はこの地を「日本でもっとも豊かな隠れ里」と記している。
出典:https://www.japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story018/
【人吉球磨の日本遺産ストーリーの柱は3つ】
【漫画でも紹介されています】
人吉球磨の日本遺産について体験していただくなら、この地域を代々統治してきた相良氏の史跡や史料に触れながら、そのなかで脈々と引き継がれてきた人吉球磨の文化や食事などを味わっていただくことがベストです!
人吉球磨は全国18か所の1つとして日本遺産に初めて選ばれた!
2015年に初めて認定された日本遺産のストーリーは18。そのうち1つとして、人吉球磨の「相良700年が生んだ保守と進取の文化~日本で最も豊かな隠れ里ー人吉球磨~」というストーリーが選ばれたため、人吉球磨×日本遺産についてはいろいろな本が出されています。
なかでも、日本遺産のことや人吉球磨のストーリーの概要を知りたいなら以下の2冊がおすすすめです!
日本遺産の概要を学ぶならこの本。人吉球磨の構成文化財も一通り紹介されており、どんな場所が日本遺産に入っているかがパッと分かりやすい解説書になっています
「日本遺産の概要は分かっているので、それぞれのストーリーの詳細やおすすめ観光スポット、ルートなどを知りたい」という方ならこちらの本がおすすめです
日本遺産には大きく2つのタイプがある
- 単一の市町村内でストーリーが完結する「地域型」
- 複数の市町村にまたがってストーリーが展開する「シリアル型」
人吉球磨の日本遺産は人吉市や多良木町、あさぎり町に水上村…と10の市町村がかかわっているのでシリアル型!全部を観光すると、1,2日では周りきれないほど広いエリアを観光することになります!それでは大変なので、ここでは個人的おすすめスポットを5つご紹介させていただきます
人吉球磨のおすすめ日本遺産観光スポット5選!
日本遺産の解説で触れましたが、人吉球磨の日本遺産のストーリーは複数の市町村にまたがるシリアル型。ここでは数十もの構成要素のうち「公共交通機関でもアクセスしやすく」「ストーリーだけでなく外観や雰囲気も素敵な」場所を5つピックアップしました!
青井阿蘇神社とおくんち祭り(人吉市)
人吉市の中心地にあり、熊本県内には通潤橋とあわせて2件しかない国宝の1つでもあります。相良氏入国以前の創建で、茅葺屋根の社殿が特徴的です。
また、青井阿蘇神社の建築様式は「人吉球磨様式」と言われ、人吉球磨のいろいろな神社仏閣に見られています。
毎年10月3~11日まで行われる「おくんち祭り」では日本遺産の構成要素である「球磨神楽」の奉納もあります。日本遺産観光を始めるなら歴史的にも建築的にも文化的にも、まずはここから始めるのが良いでしょう。
〒868-0005
熊本県人吉市上青井町118
年中無休
9:00~17:00
0966222274
無料
願成寺と清水寺(人吉市)
人吉の歴史を700年支えてきた相良藩の菩提寺である願成寺。人吉球磨の日本遺産を知るうえで相良家は欠かせない要素であり、相良家の歴代当主の墓がある願成寺は参拝が欠かせない場所のひとつです。数々の重要文化財を持つ寺で参拝すると厳かな気分になれます。
また、敷地内には日本遺産の構成要素である相良三十三観音巡りの一番巡礼地である「清水観音」もあり、三十三観音巡りの概要などを知ることもできます。
〒868-0022
熊本県人吉市願成寺町956
0966244161
定休 なし
9:00~17:00
拝観無料
駐車場あり
青蓮寺阿弥陀堂(多良木町)
今でこそ、相良氏と言えば人吉城跡や願成寺などがある人吉市のイメージが強いですが、相良氏が入国した後の鎌倉時代から室町時代中頃までは、相良氏の跡継ぎの本家は多良木(たらぎ)町の多良木相良氏でした。
青蓮寺阿弥陀堂は、九州相良家の初代・頼景を供養するために多良木町に創建された寺社。素朴な外見ですが、人吉球磨の中世鎌倉時代の様式を代表する建物となっています。国指定重要文化財です。
〒868-0502
熊本県球磨郡多良木町黒肥地
入場料無料
十島菅原神社と十島観音(相良村)
十島菅原神社は文字通り菅原の道真を祀っており、学問にご利益がある神社として知られています。
造形としては人吉球磨の典型的な造りですが、十島の名の通り、神社の周りには十の島があり、神社もそのうちの一つに建っているのが特徴的です。特に、稲穂が立ち並ぶ時期に訪ねると素晴らしい景観でおすすめ!
近隣に相良三十三観音巡りの十島菅原観音もあるので、巡礼とあわせて訪ねてみてください。
〒868-0095
熊本県球磨郡相良村柳瀬2240
0966227757
市房山里宮神社と普門寺観音(湯前町)
本来なら、市房山を神体とする神社「市房山神宮」をご紹介したいところですが、山の中腹にあり参拝が難しいため、参拝しやすいよう建立された里宮神社をご紹介します。
青井阿蘇神社とのご縁が深く、10月8日のおくんち祭りで奉納された「球磨神楽」は人吉球磨43の神社で奉納され、12月15日に市房山神宮で終わりを迎えます。
里宮神社の近隣には、相良三十三観音巡りの「普門寺観音」やその他の日本遺産構成要素もいくつかあるので、人吉市内から始めた日本遺産巡りの目的地としてもふさわしい場所です。
〒868-0601
熊本県球磨郡湯前町3280–1
0966433032
入場無料
その他観光にあわせて体験しやすい日本遺産
【球磨焼酎】
江戸時代では貴重だった米を主原料として醸造が相良氏によって認められ、藩主から庶民に至るまで愛飲されていたお酒。焼酎の最古の文字資料である神社の落書きによって、450年以上の歴史があるといわれている。
【人吉温泉】
文献上でいちばん古いものは、1492(明応元)年に12代相良為続(ためつぐ)が湯治のために立ち寄ったという記録が残っている。現在の人吉市温泉町には、湯の神神社や湯の元観音があり、人吉温泉の歴史を感じさせる。人吉温泉は26か所が稼働中。
日本遺産の構成要素
上記で挙げた以外の日本遺産の構成要素については下記のGoogle mapにまとまっています!ぜひ参考にしてみてくださいね!
また、それぞれの特徴をより詳しく知るなら下記の2サイトがおすすめです。お時間のある方はぜひ!